折れない心

何度も敗北を味わってきた筆者が挫けずに試験勉強や語学を頑張ります。現在はAWS認定ソリューションアーキテクト[アソシエイト]に向けて対策を取り組んでいます。

Yuubariの読んでよかった本(その14)『黒牢城』

この『黒牢城』という作品で米澤穂信さんは第166回の直木賞を受賞されたのですが、米澤穂信さんのいちファンとして受賞の報せを知ったときは本当に嬉しかったことを覚えています。

その日ニュースを見ていたら突然米澤穂信さんの名前が読み上げられて、驚きと同時に「よねぽさんついに・・・直木賞!」といううれしい気持ちでいっぱいでした。

さて『黒牢城』ですが、Yuubariは単行本を購入してから読了するまでおよそ半年もかかってしまいました。

読了までに時間がかかった理由は、家に小さい子がいて手の届くところに本を置いておくと本をボロボロにされてしまうので、帯も含めて大事に保管したいこの本を読むときは子どもが寝た後にしか読めないからでした。

文庫本ならば通勤時に持ち歩いて通勤電車の中で読めば良いのですが、重量のあるこの単行本はそういうわけにもいかず自宅でしか読めない状況でした。

そこで夜な夜な子どもを寝かしつけた後に読み始めるわけですが、重厚な歴史小説なので難解な表現も多々あり10ページ読むとYuubariにも睡魔が訪れてそこで読書中断・・ということが多々ありました。

 

最近ようやく最後まで読み終わりましたが、本当に読み応えのある骨太な小説でした。米澤穂信さんが歴史小説を書くのはこれが始めてだと思いますが、米澤穂信さんの持ち味であるミステリー要素も抜群に冴えていましたし、戦国期の考証も充実した著述表現も非常に巧みで読んでいてとても惹きこまれます。

普段小説は基本的に文庫本しか買わないYuubariが1600円(税別)をはたいて買った、そのもとは十分に取りました( )笑。

 

読了後の満足度がとても高い一作でしたが、しかし誰にでも薦められるかというとちょっと躊躇してしまうかも。

この作品は戦国武将の荒木村重が主君の織田信長に謀反を起こし、村重が統治する有岡城で籠城しつつ織田配下の特使である黒田官兵衛を地下に幽閉し(ここまで史実)、籠城中に城内で起こる様々な事件を虜囚である黒田官兵衛の知恵を借りて解き明かしていくという大筋なのですが、日本の戦国時代の地政学的な知識や勢力図・行動様式・武家社会の在り方など当時の知識が無いと楽しむことが難しいかと思われます。

 

Yuubariも戦国時代についてはあまり明るくなく、荒木村重黒田官兵衛は名前くらいしか知りませんでしたが、有岡城の籠城戦については『黒牢城』を読むまでは全く知りませんでした。

以前和田竜さんの『村上海賊の娘』を読んだことがあったので(『村上海賊の娘』も抜群に面白いですしオススメ)、石山本願寺や毛利勢と織田信長の対立構造は理解していましたが、『黒牢城』はかなり史実を下敷きに書かれている小説なのできちんと歴史的バックグラウンドを知らないと勿体ない。

そこで『黒牢城』を読みつつ下記の本も並行して読みました。

 

『読むだけですっきりわかる戦国史

この一冊でほんとうに戦国期の歴史がすっきりわかりました!

『読むだけですっきりわかる戦国史』で荒木村重黒田官兵衛について記述されているのはほんの数ページですが、織田信長を中心とする当時の情勢がすっきりわかりましたので『黒牢城』も一層読んでいて面白くなりました。

 

『黒牢城』の主人公である荒木村重という人については、後世では戦国武将として決して評価が高くありませんが、彼が逐電したいきさつについて『黒牢城』ではとても独特の解釈となっています。

また信長側の特使だった黒田官兵衛荒木村重が殺さずに幽閉という選択をしたことや、そもそも荒木村重織田信長に対してなぜ謀反を起こしたのか独自の解釈が織り込まれています。

史実とフィクションの組み合わせによって歴史上の出来事が作者によって新しい見方が出来るのは歴史小説ならではの醍醐味かと思います。

 

一定の知識が無いと『黒牢城』を本質的に楽しむことが難しいとYuubariは考えますのでそういう意味では敷居が高い小説なのですが、戦国期の情勢に明るい人にとっては最上級のエンタメ歴史小説として『黒牢城』をオススメしたいです。