Yuubariの読んでよかった本(その6) 『妻が椎茸だったころ』
最近読んで心に残ったのはこちらの短編集。
一般論ですが、短編の良いところはさらっと読めて簡単にその世界に入り込めるところですよね。
キリが良いところで読むのを中断できるのも手軽で助かります。
『妻が椎茸だったころ』
読後に不思議な気持ちにさせてくれる5つの短編が集められた一冊です。
第42回泉鏡花賞を受賞した短編集ですが、確かにちょっと泉鏡花の小説のテイストがあるかも。
どの短編も独特のテイストがあり、ちょっと背筋がゾクッとくるようなストーリーだったり、亡き妻が残した謎のメモがきっかけで料理をはじめることになった定年退職した男性の話など様々なテイストの5編が楽しめました。
特に最初の短編『リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い』のオチにはびっくりさせられました。
留学先のアメリカで天候不順で交通の足が無くなってしまったところ親切なアメリカ人女性に助けられて一晩お世話になり夜話を進めるというスタイルで話が語られますが、読み進めるほどスリリングな会話になっていくところが本当に面白かったです。
ほかに中島京子さんでしたら、Yuubariはこの2冊を推したいです。
『小さいおうち』
直木賞を受賞して、その後松たか子さん主演で映画化もされました。
日本人にとって悲惨な体験だった太平洋戦争をとある上流階層の家で女中として過ごした女性が戦後に当時の様子を朗らかにでもときにセンチメンタルにつぶさに語るお話。
まるで見てきたかのように精緻な昭和初期の生活が描かれていて驚きました。
おそらくとても丹念に時代考証を積み上げて執筆されたのかと思います。
リアリティがある時代背景に潜むロマンスをせつなく描いていて読み終わったあとしばらく心に残った小説でした。
『かたづの!』
歴史小説なので、読む人を選ぶかもしれませんが歴史好きならば文句なくオススメできる一冊。
慶長5年東北南部藩の物語を描いた作品ですが、かたづの(一角)の羚羊や河童が出てきたりファンタジックな要素と史実であった出来事をうまく融合してとても読み応えのある作品でした。
人間の精神性の強さに心を揺さぶられながら読み進めて重厚な作品でした。