Yuubariの読んでよかった本(その5) 『美術展の不都合な真実』
Yuubariの読んでよかった本(その5) 『美術展の不都合な真実』
新型コロナウィルスの影響で政府から緊急事態宣言が発令された今年(2020年)の4月は軒並みどの美術館も一時休業に追い込まれました。
美術館だけではなく、スポーツ施設・ライブ会場・ホテル・デパートなど人が集まるありとあらゆる施設がコロナ禍のあおりを受けました。
Yuubariもこの時期は観たい映画や行きたい美術展がたくさんあったのですが全部行くことができませんでした。
そんな中、美術展にまつわる本を探していましたがこちらの一冊は衝撃を受けました。
衝撃を受けると同時に、年に数回気になった美術展に行く程度のミーハーな美術好きに過ぎないYuubariですが、今までとても浅はかだった自分の価値観とマスコミ主導の商業主義に乗せられて大型企画美術展ばかりに足を延ばしていたことをとても反省させられました。
タイトル通りこの本では美術展にとって不都合な真実を語っています。
今まで舞台裏を知らずに美術展を楽しんできたYuubariにとっては驚愕な裏話の数々に驚かされました。
ーYuubariが気になっていたことの回答が明示されていました
いち美術ファンであるYuubariにとっても美術展に何度も行くうちに疑問になっていたことがいくつもありました。
・常設展示会場がない美術館(上野の森美術館、渋谷Bunkamuraミュージアム、国立新美術館、東京都美術館など)は企画展示がない間のスタッフ(学芸員)は何をやっているのか?
・イヤホンガイドの音声担当はなぜ美術関係者ではなくいつも「旬の」芸能人ばかりなのか。
・近年常設展示会場以外ではどの企画展も来場者で激混み状態になってきたのはなぜか。
・展示テーマが希薄な海外有名美術館の作品をごそっと持ってきただけの「●●美術館展」が増えてきているのはなぜか
これらの疑問が詳細に説明してくれています。
Yuubariはからくりを知り心底驚きました。
特に2018年10月から上野の森美術館で始まった「フェルメール展」は個人的にとても疑問符だらけの展示会だったのですが、その理由が本書によってわかりとてもすっきりしました。
当時とても楽しみだったフェルメール展でしたが、高いチケット(前売り2500円)、フェルメール作品のみ強調した展示方法の仕方、時間指定しておいて入館するまでに長時間並ぶ必要があった(&館内激混み)という点などで非常にがっかりした思い出があります。
なぜあの「フェルメール展」がそうなったのかは本書を読んでよくわかりました。
ー批判だけではなくおすすめの美術館やこれからの美術展のあり方にまで言及
こうした人気の美術展の裏話だけではなく、著者おすすめの美術館や今後どう美術展や美術館があるべきかについて言及してくれているのが嬉しいです。
関東圏にも足を運ぶべき常設展示を持つ美術館がまだまだあると知りました。
学芸員の方が知恵を絞った企画展がたくさんあることをYuubariはもっと知るべきでしたね。
個人的には海外でしか見られない有名絵画を日本で観れることが嬉しいですが、そこには必ず激混みでゆっくりみれない、仕事帰りに観るには早すぎる閉館時間という障壁があることに残念に感じていました。
こうした美術展のあり方が変わっていくことを願うとともに大量動員を目的としたテーマなき企画展ばかりみることをやめ、現代美術も含めて広いアンテナを張りさまざまな展示を観にいきたいと気持ちを改めてくれた一冊でした。