Yuubariが最近ハマっている漫画5選(その9)
Yuubariが今楽しみに読んでいる漫画ですが、5つ選んでみたところ偶然にも5つとも「職人的技能」が描かれている作品でした。
『葬送のフリーレン』では魔法を追い求めて魔法の道を求道する主人公だったり、『Blue Giant』ではジャズミュージシャンとして技能を究めることがテーマだったり、ほかの作品も漫画制作という作品づくりを技能・職業としたり、博物学的知識を追求して食料事情を解決する作品だったり。
「これ」と決めたことを追い求めて一心に努力する姿って掛け値なしでカッコイイですよね。
Yuubariはひとつのことをずっと長い年月続けるのが苦手なので、そういう姿勢に憧れみたいなものがあります。
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ところで・・・
小説もそうですが、新しく読みたい漫画を探すときは好きな作者さんの作品を手に取ることが多いですね。
でも好きな作家さんの作品を追い続けているだけでは新しい漫画に出会えないわけですから、人から教えてもらったり話題作をチェックしたりします。
Yuubariの場合は「マンガ大賞」や「このマンガがすこい!」を参考に新しい作品との出会いを求めることも多いです。
小説の新しい出会いを求める場合は「本屋大賞」や「このミステリーがすごい!(通称このミス)」、「直木賞」などもいつもチェックしてます。
そういう章やランキングで自分の好きな作品(や好きな作家さんの作品)が選ばれたり受賞をしていたりすると、Yuubariはまるで自分のことのように嬉しくなってしまいます。
特に『葬送のフリーレン』が2021年の「マンガ大賞」に選ばれたときはとてもとても嬉しかったです。
この作品は少年誌に連載されていますが(Yuubariは「サンデーうぇぶり」というアプリで読んでます)、ハイテンションなバトル漫画では決してないので、そういう漫画を求めている方にはオススメできないかもしれませんが、架空の世界観を丁寧に描いた作品が好きなYuubariは今一番楽しみにしている漫画です。
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『葬送のフリーレン』
第一話を初めて読んだときはちょっとした驚きでした。
勇者パーティーが魔王を討伐して凱旋するところから物語が始まります。
目的を果たしたパーティーは解散するのですが、魔王の討伐のシーンやそこに至る苦闘の描写は一切なく、ある意味クライマックスを終えた後の物語が描かれます。
正直「この話、ここからどう広がっていくのだろう?」と感じながら読み進めましたが、とても味わい深い世界が描かれていて秀逸でした。
典型的なRPG的なファンタジー世界なのですが、しっかりとした世界観とそこの生きる人々の空気や日常が丹念に描かれていて違和感がありません。
魔王は討伐されたので表向き平和になりましたが、まだ危険な魔物や人間に敵対する冷酷な魔族は存在する。それどころか人間同士での闘争も残っていて決して安泰な世ではない。そんな世界観です。
その世界で長命なエルフの魔法使いフリーレンは希少な魔法を求めて人間の仲間と共に旅をするのですが全編に漂うのんびりした雰囲気と魔族と敵対したときのピリピリした空気のさじ加減が絶妙だと感じました。
主人公パーティーをはじめとしてキャラクターの描写がとても丁寧なので、いけ好かないと思われる人物ですら様々なエピソードを通して愛おしくなるから面白いです。魔族の冷酷さすらキャラが立っていて読み応えがありました。
現在1級魔法使い試験のエピソード読んでいますが、試験生としてのライバルだった癖のあるデンゲンさんやヴィアベルですら暖かい人間くささが次第に出てきて愛着がわいてくるから不思議。
ファンタジー世界を描いているようで人間をしっかり描いているから魅力的なのでしょうか。
なんでしょうね・・・この人たらしみたいな不思議な漫画。
『葬送のフリーレン』、いま最も楽しみにしています!
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『Blue Giant Explorer』(ブルージャイアント・エクスプローラ)
『Blue Giant』(ブルージャイアント)、『Blue Giant Supreme』(ブルージャイアント・シュプリーム)に続く本作ですが、一人の日本人ジャズミュージシャンが大成していくまでを描いたシリーズの3作目がこの『Blue Giant Explorer』になります。
シリーズ最初の『Blue Giant』では一人の新人ジャズマンが地方から東京に上京してもがきながらセッション仲間を見つけジャズマン(テナーサックス演奏者)としてのプロの第一歩に進み、『Blue Giant Supreme』ではヨーロッパで1からメンバーを集めてツアーをしながらアルバムを発売するほど一人前になり、『Blue Giant Explorer』ではジャズの本場アメリカでゼロから放浪しながら新しい土地で音楽を用いてぶつかっていくという流れで進んでいます。
正直言って『ブルージャイアント』シリーズを読むとYuubariは苦しくなります。
なぜかというと、このブルージャイアントという作品の中でとても大きな目標に向かって全くブレずにまっすぐ突き進んでいく主人公の姿を見ていると「自分はなんとちっぽけで狭い価値観や世界で生きているのだろう」と内省的になってしまうからです。
しかし迷わず前に向かう推進力は多くの人に欠けている姿勢で(当然Yuubariにも欠けています)、身寄りの無い海外でも臆せず自分の意志を曲げずにぶつかっている姿は「若さ」と片付けるには短絡的だと思わせる魅力があります。
この作者さんの別の作品(『岳』)でも感じましたが、Yuubariは並みの人間の精神力ではない主人公の大くんには圧倒され続けています。
何かに本気で全力でぶつかっていくことの執念や孤独に道を究める情念を極限まで描いた近年見ないような熱を帯びた作品であることは間違い無いです。
それはそれとして、この漫画の影響でたまにジャズを聴くようになりました。
新型コロナウィルスの問題が収束したら、ぜひ生のジャズを聴きに行ってみようと思います。
漫画や小説、映画がきっかけで新しい楽しみが生まれるって素敵なことですね。
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『ダンピアのおいしい冒険』
全くノーマークだった作品でしたが、「このマンガがすごい!2021」で第6位にランクインしていたので読んでみました。
今までに読んだことが無いタイプの漫画びっくりしました。
大航海時代、英国・スペイン・・オランダいった西欧列強が領地拡大ため南米大陸を征服していくのですが、その当時の歴史というより私掠船に乗った人たちの食糧事情に焦点を当てて描かれた冒険譚です。
船に搭載できる食料は日持ち・重量の面で限りがあるのでどうしても現地調達しないといけない。
慣れない新しい土地で四苦八苦しながら食料を得るですが、未知の世界を旅するわくわく感もとても魅力的ですし異文化との遭遇や新しい土地の生態の豊かさなど読んでいてとても想像力を掻き立てられます。
そういう環境に置いては「知っている」ということが最大の武器になるし、「知らない」ということが命を危険にさらされる状況に追いやられます。
当時の時代背景・歴史・食料事情・道徳的観念・国と国の対立状況などを詳しく調べないと描けない漫画ですし、作者さんが相当博識な上に想像力が非常に豊かだと驚きました。かなり綱渡りの危険な状況が続く航海を描いているのにどことなくほんわかしたムードの絵と雰囲気なので読みやすいですね。
作者の方はサラリーマンをしながらこの漫画を描いているそうですが、専業の漫画家さんでもないのにこのような取材力・調査力が必要なハイレベルな漫画を描けるのは本当に凄いと思います。
学生のときに世界史が好きだった人にオススメしたい作品です。
知は力ということを再認識させてくれた漫画でした。
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『笑顔のたえない職場です。』
新人漫画家さんがアシスタントさんや編集者、同業の漫画家さんに支えながら漫画という仕事にぶつかっていく作品です。
漫画家を描いた作品としては『バクマン』が有名でYuubariも愛読したものですが、『バクマン』が熱血少年漫画だとしたらこちらの『笑顔のたえない職場です。』はコメディタッチの可愛い作品です。
Yuubariは知り合いで漫画家さんの知り合いはいないので(1人知り合いがいましたが仕事の環境を訊けるほど親しくなかったです)、思い込みでモノを言っているかもしれませんが、『笑顔のたえない職場です。』はとても「漫画家あるある」がリアルに表現されていると思います。
たとえば、アシスタントが不足していてTwitterで見つけた新しく雇ったアシさんはデジタルでの描画を担当してもらうのですが、現行はすべてオンラインで処理を依頼し、会ったことも無いという描写があります。
実際、ビデオ通話で会ってみたら想像と違った人だった・・・など、漫画の作画作業がデジタル化した時代ならではのエピソードでした。
ほかにも「単行本発売前ウツ」や「連載開始前ウツ」など本来やる気に満ちた状況でウツになる話などは現役の漫画家さんでしか出てこないエピソードですし、取材や連載打ち切りになったときのメンタル維持の大変さといった漫画家という職業の苦しさも表現されます。
ですが、癖はあるけど自分を支えてくれる人たちと漫画づくりの様子をテンポよくほんわかと描いた漫画家日常風景で読んでいて心地が良いです。
漫画1冊が本になるまで漫画家さん本人はもちろん、アシスタントさん・編集さん・版元・書店・取材先など様々な人の協力で成り立っていることを丁寧に描いているところが暖かくて良かったです。
くずしろ先生の『永世乙女の戦い方』もYuubariは愛読しています。
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『薔薇はシュラバで生まれる』
「このマンガがすごい!2021」でランクインしていて、興味があり読んでみた作品です。
2021年時点でアラウンド60(60歳前後)とお見受けする漫画家さんが描いたこの作品は、少女漫画界の巨匠たちのアシスタントを通して体験した思い出や創作に関するエピソードを綴ったエッセイ漫画です。
ここでいう「薔薇」とは少女漫画特有(いまの漫画ではほぼ見かけませんが)の美形キャラと共に描かれる薔薇の表現、「シュラバ」(修羅場)とは〆切間際に漫画家さんとアシスタントたちがギリギリまで作品を仕上げる様子になります。
主に70年代に活躍した少女漫画界を代表する漫画家さんの実録「シュラバ」エピソードが描かれますが、とにかくひとつひとつのエピソードが面白くその漫画家さんの作品を愛読していた方にはたまらないと思います。
Yuubariが存じ上げない漫画家さんや名前のみしか知らない漫画家さんが多かったですが、Yuubariが以前愛読していた萩尾望都先生や美内すずえ先生、山岸涼子先生といった時代をリードしてきた女性漫画家さんの実録秘話は読んでいて本当に高揚感を感じました。
〆切前の修羅場は漫画ではよく描かれますが、部活的な連帯感を感じるエピソードが多く読んでいて楽しめましたね。
今は作画も含めてデジタル全盛期なのでリモートで仕事するデジタルアシスタントさんの存在で言えば、お互い顔も知らずに雇用主(漫画家)と被雇用者(アシスタント)が仕事をすることもあるみたいなので時代はだいぶ変わったことが実感できます。
ただし、この漫画の面白さは登場する作家さんを知っているかどうかに尽きるので読み手をとても選ぶ漫画かと思います。